夜中に何度も目が覚めてしまい、その後なかなか眠りにつけない。このような症状に悩んでいませんか?これは「中途覚醒」と呼ばれる睡眠障害の一種です。十分な睡眠が取れない状態が続くと、日中の活動にも影響が出て、心身の不調につながることも少なくありません。
この記事では、睡眠障害である中途覚醒の原因から、ご自身でできる対策、そして医療機関での治療法まで、詳しく解説します。つらい症状の改善に向けて、ぜひ最後までお読みいただき、日々の生活に取り入れられるヒントを見つけてください。
中途覚醒とは?症状と定義
中途覚醒は、睡眠中に一度または複数回目が覚め、その後再び眠りにつくことが難しくなる状態を指します。目が覚めるタイミングは人によって様々ですが、一般的には就寝から数時間後に起こりやすいとされています。目が覚めた後、寝床で考え事をしてしまったり、体の不調が気になったりして、なかなか寝付けず、結果的に睡眠時間が短くなってしまいます。
この状態が週に数回以上あり、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下といった不調を伴う場合に、「不眠症」の一つとして診断されることがあります。
不眠症の種類と中途覚醒の位置づけ
不眠症は、主に以下の4つのタイプに分類されます。中途覚醒は、この不眠症の主要なタイプの一つです。
- 入眠困難(なかなか眠りに入れない): 寝床に入ってから眠りにつくまでに30分〜1時間以上かかる状態。
- 中途覚醒(夜中に目が覚める): 睡眠中に何度も目が覚め、その後再び眠りにつくことが難しい状態。
- 早朝覚醒(朝早く目が覚める): 起きようと思っている時間よりも2時間以上早く目が覚め、その後眠りにつくことができない状態。
- 熟眠障害(眠りが浅い・ぐっすり眠れない): 睡眠時間としては足りているはずなのに、眠りが浅く休息感が得られない状態。
中途覚醒は、特に高齢者によく見られる不眠症のタイプとされていますが、年齢に関わらず、様々な原因で起こり得ます。
中途覚醒は何回以上が目安?
「夜中に何回目が覚めたら中途覚醒なの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、中途覚醒の診断に明確な回数の基準はありません。健康な人でも、睡眠中に一時的に目が覚めることは自然な生理現象です。重要なのは、目が覚めた後に再び眠りにつくことができるかどうか、そしてその覚醒が日中の活動に支障をきたしているかどうかです。
例えば、夜中に一度目が覚めてもすぐに眠り直せるのであれば、それは問題のない範囲と言えます。しかし、目が覚めてから30分以上眠れなかったり、それが毎晩のように続いたり、あるいは週に3回以上目が覚めて日中に強い眠気やだるさを感じる場合は、中途覚途覚醒の可能性が高いと考えられます。厚生労働省のウェブサイトでも、中途覚醒について「週の半分以上でそのような現象があり、不快を伴う時に症状としてとらえます」と説明されています(中途覚醒 – 厚生労働省)。
ご自身の睡眠パターンを数日間記録してみると、中途覚醒の頻度や状態を客観的に把握するのに役立ちます。
睡眠障害による中途覚醒の主な原因
中途覚醒は一つの原因だけで起こるのではなく、様々な要因が複合的に絡み合って発生することが少なくありません。ここでは、睡眠障害である中途覚醒を引き起こす主な原因を詳しく見ていきましょう。
生活習慣・睡眠環境による原因
私たちの普段の生活習慣や寝室の環境は、睡眠の質に大きく影響します。中途覚醒の原因として、以下のような点が挙げられます。
- 不規則な生活リズム: 毎日寝る時間や起きる時間がバラバラだと、体内時計が乱れ、睡眠と覚醒のリズムが不安定になります。特に週末の寝坊は、月曜日の朝がつらくなるだけでなく、体内時計を後ろにずらしてしまい、寝付きが悪くなったり夜中に目が覚めやすくなったりします。
- 就寝前のカフェイン摂取: コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があります。就寝前に摂取すると、眠りに入るのを妨げるだけでなく、睡眠を浅くして夜中に目が覚める原因となります。効果は数時間持続するため、夕食以降の摂取は避けるのが望ましいでしょう。
- 就寝前のアルコール摂取: 「寝酒」としてアルコールを飲む方もいますが、これは逆効果です。アルコールは一時的に眠気を誘いますが、体内に入ると分解され、覚醒作用のあるアセトアルデヒドなどが生成されます。これにより、睡眠の途中で目が覚めやすくなり、睡眠の質を低下させます。また、利尿作用によって夜間のトイレが近くなる原因にもなります。
- 就寝前の喫煙: タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があります。就寝前に喫煙すると、寝付きが悪くなるだけでなく、睡眠が浅くなり中途覚醒を引き起こす可能性があります。
- 就寝前のスマホやPCの使用: スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、脳を覚醒させてしまう作用があります。また、寝床での使用は精神的な興奮を招き、スムーズな入眠や深い睡眠を妨げ、中途覚醒の原因となり得ます。
- 快適でない寝室環境: 寝室の温度や湿度、明るさ、騒音も睡眠の質に大きく関わります。暑すぎたり寒すぎたり、乾燥しすぎたりすると、不快感から目が覚めやすくなります。また、外の騒音や室内の光も睡眠を妨げる要因です。快適な睡眠には、適切な温度(18〜22℃程度)と湿度(40〜60%程度)、そして暗く静かな環境が理想的です。
- 日中の運動不足: 適度な運動は快い疲労感をもたらし、夜の睡眠を促進します。しかし、運動不足が続くと、夜になってもなかなか眠りに入れなかったり、眠りが浅くなったりして、中途覚醒につながることがあります。ただし、激しい運動を寝る直前に行うと、体が興奮して眠りを妨げるので注意が必要です。
心理的要因(ストレス・不安など)
精神的な状態も中途覚醒に深く関わっています。
- ストレス: 仕事や人間関係、将来のことなど、様々なストレスは脳を覚醒状態に保ちやすく、睡眠の質を低下させます。特に慢性的なストレスは、夜中に目が覚めた時に心配事が頭を巡り、再び眠りにつくのを困難にさせます。
- 不安や悩み: 抱えている不安や悩みがあると、寝床に入ってもそのことが気になり、なかなかリラックスできません。夜中に目が覚めた際も、その不安が再燃し、覚醒状態が続いてしまうことがあります。
- 過度な緊張: 旅行先や試験の前など、いつもと違う環境や状況では緊張しやすく、これが睡眠を浅くしたり、夜中に目が覚める原因になったりします。
- 「眠らなければならない」というプレッシャー: 不眠を強く意識しすぎると、「今日も眠れないのでは」という不安や、「早く眠らなければ」という焦りが生じ、これがかえって眠りを妨げる悪循環を生み出します。夜中に目が覚めた際も、このプレッシャーが再覚醒を助長することがあります。
身体的要因(痛み・頻尿など)
体の不調も、夜中に目が覚める大きな原因となります。
- 痛みやかゆみ: 関節痛、腰痛、頭痛などの体の痛みや、湿疹などによるかゆみは、睡眠中も続くことがあり、不快感から目が覚める原因となります。
- 頻尿: 夜間に何度もトイレに行くために目が覚める「夜間頻尿」は、特に高齢者によく見られる中途覚醒の原因です。加齢による膀胱機能の変化や、前立腺肥大、過活動膀胱などが関与している場合があります。
- 消化器系の不調: 胃酸の逆流(逆流性食道炎)による胸焼けや咳、胃の不快感などが、横になった姿勢で悪化し、睡眠を妨げたり夜中に目が覚める原因となることがあります。
- 呼吸器系の不調: 咳や痰、鼻づまりなども睡眠を中断させる要因です。喘息の発作が夜間に起こりやすい方もいます。
- むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群): 寝床に入ってじっとしていると、脚に不快な感覚(むずむず、虫が這うような、痛がゆいなど)が生じ、脚を動かさずにはいられなくなる病気です。この不快感や動かしたい衝動によって、寝付きが悪くなったり夜中に目が覚めたりします。
- 薬の副作用: 服用している薬の種類によっては、副作用として不眠や中途覚醒を引き起こすことがあります。例えば、ステロイド薬、一部の降圧剤、抗うつ薬などが知られています。
疾患との関連(睡眠時無呼吸症候群など)
中途覚醒は、特定の病気が原因で起こることもあります。
- 睡眠時無呼吸症候群 (SAS): 睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。呼吸が止まるたびに脳が覚醒して呼吸を再開させようとするため、本人は自覚がなくても浅い眠りを繰り返し、夜中に何度も目が覚めているような状態になります。大きないびきや日中の強い眠気が特徴的な症状です。
- うつ病や不安障害などの精神疾患: これらの精神疾患は、睡眠障害を伴うことが非常に多いです。特にうつ病では、早朝覚醒が典型的ですが、中途覚醒もよく見られます。
- 周期性四肢運動障害 (PLMD): 睡眠中に自分の意思とは関係なく手足がピクッと動く不随意運動が周期的に起こる病気です。この動きによって、睡眠が妨げられ、中途覚醒の原因となります。むずむず脚症候群と合併することも多いです。
- その他の疾患: 甲状腺機能亢進症、心不全、腎不全など、体の様々な病気が睡眠に影響を与え、中途覚醒を引き起こす可能性があります。
これらの原因が単独、あるいは複数組み合わさって中途覚醒は起こります。ご自身の生活習慣や体の状態を振り返り、何が原因になっているのかを考えてみることが大切です。
睡眠中途覚醒を改善する対策と治し方
中途覚醒の改善には、まずご自身でできるセルフケアや生活習慣の見直しが非常に重要です。それでも改善が見られない場合は、医療機関での診断と治療を検討しましょう。
自分でできるセルフケアと生活習慣の改善
「睡眠衛生」と呼ばれる、より良い睡眠のための生活習慣の改善は、中途覚醒を含む不眠症の治療の基本となります。今日から始められる対策をいくつかご紹介します。
毎日決まった時間に寝起きする
体内時計のリズムを整えることが、質の高い睡眠には不可欠です。毎日、休日も含めて同じ時間に寝床に入り、同じ時間に起きるように心がけましょう。特に、朝起きてすぐに太陽の光を浴びることは、体内時計をリセットするために非常に効果的です。難しい場合は、カーテンを開けて自然光を取り込むだけでも効果があります。
快適な寝室環境を整える
睡眠の質を高めるためには、寝室を睡眠に適した環境に整えることが大切です。
- 温度と湿度: 寝室の温度は18〜22℃、湿度は40〜60%が理想的とされています。夏場はエアコンで温度を調整し、冬場は加湿器などを活用しましょう。
- 明るさ: 部屋をできるだけ暗くすることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が促されます。厚手のカーテンを使用したり、遮光ブラインドを取り付けたりして、外からの光を遮断しましょう。常夜灯なども避けるのが望ましいです。
- 騒音: 睡眠中に大きな音があると、目が覚めやすくなります。耳栓を使ったり、二重窓にしたり、ホワイトノイズマシンを利用したりするのも有効です。
- 寝具: ご自身に合ったマットレスや枕を選ぶことも重要です。体圧を分散し、体に負担がかからない寝具を選ぶことで、体の痛みが原因で目が覚めるのを防ぐことができます。
就寝前のNG行動(スマホ、カフェイン、アルコール)
先に原因としても挙げましたが、就寝前の特定の行動は中途覚醒を悪化させます。
- スマホ・PC: 就寝時間の少なくとも1時間前からは、スマートフォンやパソコンの使用を控えるようにしましょう。電子書籍を読む場合も、ブルーライトカット機能を利用するか、紙媒体の書籍を選びましょう。
- カフェイン: 午後遅い時間帯や夕食以降は、カフェインを含む飲み物(コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなど)の摂取を避けましょう。
- アルコール: 寝酒は睡眠の質を低下させ、夜中に目が覚める原因となります。眠りを誘う目的での飲酒はやめましょう。
- 就寝直前の飲食: 就寝直前に食事をしたり、多量の水分を摂取したりすると、消化活動で胃腸が活発になったり、夜間のトイレが近くなったりして、中途覚醒の原因になります。夕食は寝る3時間前までに済ませるのが理想です。
日中の適度な運動
日中に体を動かすことは、夜の深い眠りにつながります。ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、ご自身が心地よいと感じる有酸素運動を習慣にしましょう。ただし、激しい運動は体を興奮させてしまうため、就寝直前は避け、就寝の少なくとも3時間前までに行うのがおすすめです。
リラクゼーションを取り入れる(入浴、呼吸法など)
寝る前にリラックスできる時間を作ることも、スムーズな入眠や深い眠りにつながります。
- 入浴: 就寝の1〜2時間前に、ぬるめ(38〜40℃程度)のお湯にゆっくりと浸かることで、体の深部体温が一時的に上がり、その後下がる過程で眠気を誘います。
- 腹式呼吸: ゆっくりと鼻から息を吸い込み、お腹を膨らませ、口からゆっくりと息を吐き出す腹式呼吸は、心拍数を落ち着かせ、リラックス効果があります。寝床で試してみましょう。
- ストレッチや軽いヨガ: 体の緊張をほぐすことで、リラックス効果が得られます。
夜中に目が覚めてしまった時の対処法
夜中に目が覚めてしまった時、どのように対処するかが、再び眠りにつけるかどうかの分かれ道となります。
中途覚醒を気にしない考え方
夜中に目が覚めてしまったときに最も避けたいのは、「また目が覚めてしまった」「どうしよう、明日が不安だ」と焦ったり不安になったりすることです。このようなネガティブな感情は脳を覚醒させてしまい、余計に眠れなくなります。
目が覚めても、「仕方ない」「自然なことだ」と受け流し、あまり気にしないように努めることが大切です。考え事が頭を巡り始めたら、「今考えても解決しないことだ」と一旦思考を中断する練習をすることも有効です。
眠れない時は一度布団から出る
15〜20分経っても眠りにつけない場合は、無理に寝床にいようとせず、一度寝室から出ることをおすすめします。寝床で悶々と過ごすと、「寝床=眠れない場所」というネガティブな関連付けが強まってしまいます。
寝室から出て、薄暗い別の部屋で、リラックスできることをして過ごしましょう。例えば、
- 静かな音楽を聴く
- 退屈な本を読む(刺激の強いものは避ける)
- 温かいノンカフェインの飲み物(ハーブティーなど)を飲む
などを試してみてください。決して、スマホを見たり、テレビをつけたり、電気を明るくしたりしないように注意してください。
眠気を感じ始めたら、再び寝室に戻り、寝床に入ります。この方法で、「寝床は眠る場所である」という関連付けを保つことが、中途覚醒の改善につながります。
病院での診断と治療法
セルフケアや生活習慣の改善を試みても中途覚醒が続く場合や、日中の眠気や倦怠感が強く、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関を受診することを検討しましょう。
中途覚醒で病院に行くべきか?何科を受診する?
以下のような場合は、医療機関への相談を検討するサインかもしれません。
- セルフケアを2週間〜1ヶ月程度続けても改善が見られない
- 夜中の覚醒が頻繁で、睡眠時間が著しく短くなっている
- 日中の強い眠気、倦怠感、集中力低下、意欲低下などがあり、仕事や学業、家事などに支障が出ている
- 「眠れないこと」自体に対する強い不安や恐怖を感じている
- 大きないびきや、睡眠中の呼吸停止を指摘されたことがある(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
- 手足の不快な感覚や不随意運動によって眠りが妨げられている(むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害の可能性)
受診する科としては、まずかかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。症状に応じて、より専門的な医療機関を紹介してもらえる場合があります。中途覚醒を含む睡眠障害を専門的に診ているのは、精神科、心療内科、または睡眠専門外来です。特に、睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群などの器質的な睡眠障害が疑われる場合は、睡眠専門外来が設置されている医療機関の受診が望ましいです。
医療機関での診断プロセス
医療機関では、中途覚醒の原因を特定するために、様々な角度から診断を行います。
- 問診: 医師が患者さんの睡眠の状態、生活習慣、体の既往歴や服薬状況、精神的な状態などを詳しく尋ねます。睡眠の状況を具体的に把握するために、事前に数日間、睡眠日誌をつけて持参すると診断の助けになります。睡眠日誌には、寝床に入った時間、眠りについたと感じた時間、夜中に目が覚めた時間と回数、目が覚めていた時間、朝起きた時間、日中の眠気などを記録します。
- 身体診察: 必要に応じて、身体的な疾患が原因となっていないかを確認するための診察や検査(血液検査など)が行われることがあります。
- 睡眠ポリグラフ検査 (PSG): 睡眠中に脳波、眼球運動、筋肉の動き、呼吸、心拍数、血中酸素濃度などを同時に測定する検査です。睡眠の深さや覚醒の頻度、睡眠中の呼吸異常(無呼吸など)、手足の不随意運動などを客観的に評価するために行われます。一泊入院が必要となるのが一般的ですが、簡易検査や在宅での検査もあります。
- アクチグラフィー: 腕時計のような装置を装着し、体の動きから睡眠・覚醒パターンを記録する検査です。自宅で数日間行い、より普段の睡眠状態を把握するために用いられます。
これらの情報をもとに、医師が中途覚醒の原因を診断し、適切な治療方針を決定します。
中途覚醒に対する治療法(薬物療法・認知行動療法など)
診断結果に基づき、中途覚醒の治療が行われます。治療法は原因によって異なりますが、主なものとしては以下のようなものがあります。
- 原因疾患の治療: 睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、うつ病などの疾患が中途覚醒の原因となっている場合は、まずその疾患の治療を優先します。例えば、睡眠時無呼吸症候群にはCPAP療法(持続陽圧呼吸療法)が、むずむず脚症候群には特定の薬剤が有効です。
- 認知行動療法 (CBT-I): 不眠に対する非薬物療法として、近年注目されている治療法です。不眠に関連する誤った考え方や行動パターン(例: 「眠れないのは重大な病気のせいだ」「寝床で長時間過ごせば眠れるはず」など)を修正し、より良い睡眠習慣を身につけることを目指します。具体的には、睡眠制限法(必要以上に長く寝床にいないようにする)、刺激制御法(寝床は眠るためだけに使用し、眠れない時は一度寝床から出る)、リラクゼーション法などを組み合わせます。複数のセッションを通して行われ、中途覚醒を含む慢性不眠に高い効果があることが示されています。
- 薬物療法: 医師の判断により、睡眠薬が処方されることがあります。中途覚醒に対しては、比較的効果の持続時間が長いタイプの睡眠薬や、途中で目が覚めたときに服用できるタイプの睡眠薬が用いられることがあります。
睡眠薬の種類 | 特徴 | 中途覚醒への適用 | 注意点 |
---|---|---|---|
非ベンゾジアゼピン系 | 脳のGABA受容体に作用。比較的短時間作用型〜長時間作用型がある。 | 効果時間に応じて、中途覚醒を含む様々なタイプの不眠に用いられる。 | ふらつき、翌朝への持ち越し(作用時間が長い場合)、依存性の可能性(比較的低いとされるが注意は必要)。 |
ベンゾジアゼピン系 | 脳のGABA受容体に作用。効果時間によって様々。 | 長時間作用型のものが中途覚醒に用いられることがある。 | 筋弛緩作用、ふらつき、転倒リスク(特に高齢者)、依存性、耐性形成(効果が弱くなる)、離脱症状(急にやめると不調が出る)。高齢者では推奨されないことが多い。 |
メラトニン受容体作動薬 | 脳のメラトニン受容体に作用し、体内時計を調整。自然な眠気を促す。 | 体内時計の乱れによる不眠(特に早朝覚醒や中途覚醒)に有効とされる。 | 効果発現に時間がかかる場合がある。効果の感じ方には個人差がある。比較的副作用は少ない。 |
オレキシン受容体拮抗薬 | 覚醒に関わる神経伝達物質オレキシン働きを抑える。自然な眠りに近い作用。 | 寝付きの悪さ、中途覚醒の両方に有効とされる。 | 悪夢、睡眠麻痺などの副作用の可能性。比較的新しいタイプの睡眠薬。 |
その他(抗うつ薬、抗ヒスタミン薬など) | 不眠を伴ううつ病などに対し、原疾患治療として用いられる場合や、催眠作用を期待して用いられる場合がある。 | 原疾患の治療と共に中途覚醒の改善も期待できる。 | 目的外使用となる場合や、副作用に注意が必要。 |
睡眠薬は、あくまで症状を緩和するための一時的な手段として用いられることが多く、原因そのものを治すものではありません。漫然と長期にわたって服用するのではなく、医師の指示に従い、必要最小限の使用にとどめることが重要です。自己判断での服用中止や増減は危険ですので絶対に行わないでください。
オンライン診療による処方
近年では、不眠症の診療をオンラインで行っている医療機関も増えています。中途覚醒の原因が比較的明確で、対面診療のための時間確保が難しい場合や、自宅から医療機関が遠い場合などに選択肢の一つとなります。
オンライン診療では、ビデオ通話などを利用して医師の問診を受け、必要に応じて睡眠薬などが処方されます。処方された薬は自宅に郵送される形式が一般的です。ただし、睡眠時無呼吸症候群の検査が必要な場合や、詳しい検査が必要な身体疾患が疑われる場合は、対面診療が必要となります。オンライン診療が可能かどうかは、医療機関によって異なりますので、事前に確認しましょう。
オンライン診療は、通院の手間を省けるというメリットがありますが、医師が患者さんの状態を直接詳しく診察できないという制約もあります。ご自身の症状や状況に合わせて、最適な受診方法を検討することが大切です。
まとめ|睡眠障害 中途覚醒の改善に向けて
夜中に何度も目が覚める「中途覚醒」は、多くの方が経験するつらい睡眠障害の一種です。その原因は、生活習慣や睡眠環境、ストレスなどの心理的要因、体の不調、あるいは睡眠時無呼吸症候群などの疾患まで多岐にわたります。厚生労働省の定義では、「週の半分以上」の頻度があり、かつ不快感を伴う場合に症状として捉えられます(中途覚醒 – 厚生労働省)。
中途覚醒の改善のためには、まずご自身の生活を振り返り、睡眠衛生の観点から改善できる点がないかを見直すことが非常に重要です。毎日同じ時間に寝起きする、快適な寝室環境を整える、就寝前のNG行動を避ける、適度な運動やリラクゼーションを取り入れるといったセルフケアを試してみましょう。夜中に目が覚めてしまった時は、焦らず、眠れない場合は一度寝床から出るなどの対処法を実践してみてください。
セルフケアで改善が見られない場合や、日中の活動に支障が出ている場合は、一人で悩まず医療機関を受診しましょう。精神科、心療内科、または睡眠専門外来で、医師の診断に基づいた適切な治療を受けることができます。治療法には、認知行動療法や、必要に応じて睡眠薬による薬物療法、原因となっている疾患の治療などがあります。近年ではオンライン診療も選択肢の一つとなっています。
中途覚醒は、適切な対策や治療によって改善が期待できる睡眠障害です。つらい症状を我慢せず、今回ご紹介した情報を参考に、ご自身に合った方法で改善に取り組んでみてください。質の高い睡眠を取り戻し、心身ともに健康な毎日を送りましょう。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。個別の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。
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