夜中に何度も目が覚めてしまい、熟睡できないと感じていませんか? 特に「二時間おきに目が覚める」といったように、決まった間隔で目が覚める状態が続いている場合、もしかすると何らかのサインかもしれません。多くの人が一時的な寝覚めの悪さを経験しますが、これが頻繁に起こり、日中の活動に支障が出ているのであれば、原因を知り適切な対策をとることが大切です。この記事では、「二時間おきに目が覚める」という状態がどのようなもので、考えられる原因にはどのようなものがあるのか、そしてご自宅でできる対策や、もし病気が疑われる場合にどのような病院を受診すれば良いのかについて、詳しく解説します。あなたの睡眠に関する不安を解消し、より質の高い睡眠を取り戻すためのヒントを見つけてください。
二時間おきに目が覚めるのは「中途覚醒」
夜中に一度目を覚ますことは、健康な人でも起こり得ます。しかし、「二時間おきに」など、頻繁に、しかもほぼ同じような間隔で目が覚めてしまう状態は、「中途覚醒」と呼ばれる睡眠障害の一種に分類されることがあります。
中途覚醒とは?睡眠サイクルの基礎知識
私たちの睡眠は、主に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という二つの異なる状態が繰り返されるサイクルで構成されています。
- ノンレム睡眠: 体と脳が休息している深い眠りです。最初のノンレム睡眠が最も深く、一晩のうちに徐々に浅くなります。
- レム睡眠: 体は休んでいますが、脳は活動している浅い眠りです。夢を見ることが多い段階です。
このレム睡眠とノンレム睡眠のサイクルは、個人差はありますが約90分〜120分(1.5時間〜2時間)の周期で一晩に数回繰り返されます。深いノンレム睡眠から浅いレム睡眠へと移行する際に、自然と一時的に覚醒レベルが高まることがあります。このとき、通常はすぐに眠りに戻ることができますが、何らかの原因があると、完全に目が覚めてしまい、そのまま再び眠りにつくのが難しくなることがあります。これが中途覚醒です。
特にサイクル周期に近い「二時間おき」に目が覚める場合、睡眠サイクルの浅い部分で何らかの阻害要因(後述する病気や環境、習慣など)が発生し、覚醒状態に移行してしまっている可能性が考えられます。
なぜ二時間おきに目が覚めるのか?考えられる原因
中途覚醒、特に二時間おきといった周期的な覚醒の原因は多岐にわたります。大きく分けて以下のカテゴリが考えられます。
- 病気によるもの: 睡眠の質や呼吸、体の不快な症状を引き起こす病気が原因となるケース。
- 精神的な要因: ストレスや不安、うつ病などが睡眠リズムを乱すケース。
- 生活習慣の問題: 飲酒、カフェイン摂取、不規則な生活などが原因となるケース。
- 寝室環境の問題: 寝室の温度、湿度、明るさ、騒音などが睡眠を妨げるケース。
- 年齢による生理的な変化: 加齢に伴う体の変化が睡眠に影響を与えるケース。
これらの原因が単独、あるいは複数組み合わさることで、睡眠サイクルがスムーズに進まず、周期的な覚醒を引き起こしている可能性があります。特に病気が原因となっている場合は、適切な診断と治療が必要です。
二時間おきに目が覚める原因となる病気
頻繁な中途覚醒の背後には、いくつかの病気が隠れていることがあります。「二時間おきに目が覚める」という具体的な症状は、特定の病気を示唆している場合もあります。ここでは、主な病気について詳しく見ていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。これにより体内の酸素レベルが低下し、脳が覚醒して呼吸を再開させようとします。この覚醒は自覚がない場合も多いですが、重症の場合は「二時間おき」といった周期で意識的に目が覚める原因となります。
- 原因: 多くの場合は、寝ている間に舌の根元などが気道を塞いでしまうこと(閉塞性SAS)によるものです。肥満、首が短い、あごが小さい、扁桃腺が大きいといった体格的な特徴がリスクを高めます。
- 症状:
- 大きないびき(特に途中で止まる)
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される
- 夜間、何度も目が覚める(中途覚醒)
- 寝汗をかく
- 日中の強い眠気
- 集中力の低下、倦怠感
- 頭痛、口の渇き(起床時)
- なぜ中途覚醒が起こるか: 無呼吸や低呼吸によって酸素飽和度が低下すると、脳は危険を察知して覚醒反応を起こします。これにより覚醒レベルが上がり、目が覚めてしまうのです。無呼吸のエピソードが周期的に起こるため、それに伴う覚醒も周期的に現れる可能性があります。
- リスク: SASを放置すると、高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病などの深刻な病気を引き起こすリスクが高まります。
- 治療法: 確定診断には睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)が必要です。治療法としては、CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)装置の使用が最も一般的です。これは寝ている間に鼻マスクから空気を送り込み、気道が開いた状態を保つものです。マウスピース療法や、原因に応じた外科手術が検討される場合もあります。
むずむず脚症候群
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)は、主に夕方から夜間にかけて、脚に不快な異常感覚が現れる病気です。「むずむずする」「かゆい」「虫が這っているよう」「痛い」など、表現は様々ですが、じっとしていると症状が悪化し、脚を動かすと軽快するという特徴があります。
- 原因: 脳内の鉄分不足やドパミン機能の異常が関与していると考えられています。遺伝的な要因や、鉄欠乏性貧血、腎不全、妊娠、一部の薬剤なども原因となり得ます。
- 症状:
- 主に夕方から夜間にかけて、脚(時には腕や体幹)に不快な異常感覚が現れる。
- じっとしている時(特に寝る前や睡眠中)に症状が悪化する。
- 脚を動かすことで症状が一時的に軽快する。
- 不快感から入眠困難になったり、夜中に目が覚める(中途覚醒)。
- なぜ中途覚醒が起こるか: 不快な異常感覚によって深い睡眠が妨げられたり、症状が強くなるたびに覚醒してしまい、眠りを維持することが困難になります。
- 治療法: 鉄欠乏がある場合は鉄剤の補充を行います。症状が重い場合は、ドパミン受容体作動薬などの薬物療法が行われます。
周期性四肢運動障害
周期性四肢運動障害(PLMD)は、睡眠中に自分の意思とは関係なく、主に脚が周期的にピクピクと動くことを繰り返す病気です。多くの場合はむずむず脚症候群に合併して見られますが、単独で起こることもあります。
- 原因: むずむず脚症候群と同様に、脳内のドパミン機能の異常などが関与していると考えられています。
- 症状:
- 睡眠中に、主に足首、膝、股関節が周期的に(約20秒~40秒間隔で)ピクつく、けり上げる、曲げるといった運動を繰り返す。
- 多くの場合、患者本人には自覚がない。
- 運動が起こるたびに脳波上では覚醒反応が見られ、睡眠が中断される(中途覚醒の原因となる)。
- 日中の眠気、疲労感、集中力の低下。
- なぜ中途覚醒が起こるか: 体は寝ていても、周期的な不随意運動が脳を覚醒させてしまうため、睡眠が分断され、中途覚醒や睡眠の質の低下を招きます。
- 治療法: むずむず脚症候群と同様に、ドパミン受容体作動薬やベンゾジアゼピン系の薬などが用いられることがあります。
夜間頻尿・過活動膀胱
夜間に排尿のために何度も目が覚める状態を夜間頻尿と呼びます。一般的に、高齢になるほど夜間頻尿の頻度は高まりますが、年齢に関わらず起こる場合もあります。特に、急な尿意切迫感で目が覚めてしまう場合は、過活動膀胱の可能性も考えられます。
- 原因:
- 夜間多尿: 寝ている間に作られる尿の量が多い(心不全、腎疾患、飲水量の過多、睡眠時無呼吸症候群など)。
- 膀胱容量の低下: 膀胱炎、前立腺肥大症、過活動膀胱などにより、一度に貯められる尿の量が少ない。
- 睡眠障害: 不眠症などにより眠りが浅く、少しの尿意でも目が覚めやすい。
- 症状:
- 夜間に排尿のために1回以上目が覚める。
- 特に、二時間おきなど規則的な間隔で目が覚め、そのたびにトイレに行く必要がある。
- (過活動膀胱の場合)急に我慢できないような尿意を感じる(尿意切迫感)。
- なぜ中途覚醒が起こるか: 尿意によって脳が覚醒し、トイレに行かなければならないという意識が生じるため、目が覚めます。夜間多尿や膀胱の問題があると、周期的に尿意が生じ、それに伴って覚醒することも考えられます。
- 治療法: 原因に応じて異なります。夜間多尿の場合は原因疾患の治療や水分摂取量の調整、抗利尿ホルモン薬の使用。膀胱容量の低下や過活動膀胱の場合は、薬物療法や行動療法(水分・カフェイン制限、膀胱訓練など)が行われます。
その他の睡眠障害
上記以外にも、中途覚醒を引き起こす睡眠障害は複数あります。
- 不眠症: 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒のいずれか、または複数を伴い、日中の活動に支障をきたす状態です。特定の病気ではなく、精神的な要因や生活習慣、他の病気が複雑に関与していることが多いです。
- 概日リズム睡眠障害: 体内時計のリズムが社会生活のリズムとずれてしまう病気です。シフト勤務や時差ボケなどによっても一時的に生じますが、体内時計の異常が原因で慢性化することもあります。就寝時間や起床時間が毎日ずれることで、睡眠が分断されやすくなります。
病気による中途覚醒の原因比較
病気 | 主な原因 | 中途覚醒との関連 | 主な症状 | 治療法例 |
---|---|---|---|---|
睡眠時無呼吸症候群(SAS) | 気道の閉塞(肥満、扁桃腺肥大など) | 無呼吸による低酸素血症からの覚醒反応 | 大いびき、呼吸停止、日中の眠気、起床時の頭痛 | CPAP療法、マウスピース、手術 |
むずむず脚症候群(RLS) | 脳内鉄分不足、ドパミン機能異常など | 脚の不快な感覚による入眠困難や覚醒 | 夕方~夜間の脚の不快感、動かすと軽快、じっとしていると悪化 | 鉄剤補充、ドパミン受容体作動薬など |
周期性四肢運動障害(PLMD) | ドパミン機能異常など(RLSに合併が多い) | 睡眠中の周期的な不随意運動による脳の覚醒 | 睡眠中の脚のピクつき/けり上げ(本人無自覚の場合が多い)、日中の眠気、疲労感 | ドパミン受容体作動薬、ベンゾジアゼピン系薬など |
夜間頻尿 | 夜間多尿、膀胱容量低下、睡眠障害など | 尿意による覚醒 | 夜間に排尿のため複数回起きる(特に高齢者)、(過活動膀胱なら)急な尿意切迫感 | 原因疾患治療、薬物療法、行動療法 |
不眠症 | 精神的要因、生活習慣、他の疾患など(特定の原因がない場合も) | 入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒のいずれかまたは全て | 眠れないことによる日中の活動への支障(眠気、倦怠感、集中力低下など) | 睡眠薬、認知行動療法、原因疾患の治療 |
概日リズム睡眠障害 | 体内時計の異常、不規則な生活 | 体内時計と生活リズムのずれによる睡眠分断 | 希望する時間に寝たり起きたりできない、不眠、日中の眠気 | 光療法、メラトニン受容体作動薬、生活指導 |
二時間おきに目が覚める病気以外の原因
中途覚醒の原因は、必ずしも病気だけではありません。私たちの心や日々の生活習慣、寝室の環境なども、睡眠の質に大きく影響を与えます。特に「二時間おきに目が覚める」といった周期的な覚醒は、これらの要因が睡眠サイクルを乱している可能性を示唆しています。
精神的な要因(ストレス、不安、うつ病など)
ストレスや不安は、自律神経のバランスを崩し、交感神経を優位にさせてしまいます。通常、睡眠中は副交感神経が優位になりリラックスした状態になりますが、ストレスや不安があると脳が興奮状態になりやすく、眠りが浅くなったり、夜中に目が覚めやすくなったりします。
- メカニズム: ストレスがかかると、コルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは覚醒作用を持ち、脳を活動的な状態に保とうとします。そのため、睡眠中であっても完全に休息できず、特に睡眠サイクルの浅い部分で覚醒しやすくなります。
- 具体的な影響:
- 寝る前に考え事をしてしまう。
- 将来への不安や仕事の悩みなどを抱えている。
- 緊張しやすい性格。
- うつ病や適応障害などの精神疾患がある場合も、不眠や中途覚醒は主要な症状の一つです。これらの疾患では、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、睡眠リズムが大きく乱れることがあります。
- 対策: ストレスの原因に対処すること、リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、軽いストレッチなど)を取り入れること、専門家(医師、心理士)に相談することなどが有効です。
生活習慣の問題(飲酒、カフェイン、不規則な生活など)
日々の生活習慣は、睡眠の質に直接的な影響を与えます。特に、以下のような習慣は中途覚醒の原因となりやすいです。
- 飲酒: 「寝酒」としてアルコールを飲むと、入眠は早くなることがあります。しかし、アルコールは体内で分解される過程で覚醒作用のあるアセトアルデヒドを生成し、睡眠後半で眠りを浅くし、夜中に目が覚める原因となります。また、利尿作用もあるため、夜間頻尿を招くこともあります。特に深酒は、睡眠の質を著しく低下させます。
- カフェイン: コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインには覚醒作用があります。摂取してから数時間、長い場合は10時間以上効果が持続することもあります。夕食後や寝る前にカフェインを摂取すると、寝つきが悪くなるだけでなく、睡眠中も脳が覚醒しやすくなり、中途覚醒の原因となります。
- ニコチン: タバコに含まれるニコチンも覚醒作用があります。喫煙習慣がある人は、非喫煙者に比べて睡眠の質が低い傾向があります。
- 不規則な生活: 毎日違う時間に寝たり起きたり、休日と平日で大きく睡眠時間がずれる(ソーシャルジェットラグ)といった不規則な生活は、体内時計を乱し、自然な睡眠リズムを崩します。体内時計が狂うと、深い睡眠が得られにくくなり、中途覚醒が起こりやすくなります。
- 寝る前のスマホ・PC使用: スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、脳を覚醒させ、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を抑制します。寝る直前まで使用していると、脳が覚醒状態になり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりして、中途覚醒につながります。
- 運動習慣: 適度な運動は睡眠の質を高めますが、寝る直前の激しい運動は体を興奮させ、寝つきを悪くしたり、中途覚醒の原因となることがあります。運動するなら、就寝の3時間前までには済ませるのが理想です。
これらの生活習慣を見直すことは、中途覚醒の改善に非常に重要です。
寝室環境の問題
寝室の環境が、無意識のうちに睡眠を妨げていることもあります。
- 温度と湿度: 寝室が高温多湿すぎたり、寒すぎたりすると、体は快適に眠ることができません。一般的に、寝室の適温は20~22℃、湿度は50~60%が良いとされています。
- 明るさ: 真っ暗でないと眠れない人もいれば、ある程度の明るさがないと不安な人もいますが、一般的には寝ている間に強い光(特にブルーライトを含む光)を浴びると、メラトニンの分泌が抑えられ、睡眠の質が低下します。常夜灯も最小限にするか、足元を照らす程度に留めるのが望ましいです。
- 騒音: 車の音、話し声、時計の秒針の音など、睡眠中に耳に入る音は、意識しないレベルであっても脳を刺激し、眠りを浅くしたり、覚醒させたりすることがあります。耳栓やホワイトノイズの活用が有効な場合もあります。
- 寝具: 合わない枕やマットレス、肌触りの悪い寝具なども、体の不快感から寝返りの頻度が増えたり、眠りが浅くなったりして、中途覚醒の原因となることがあります。
快適な寝室環境を整えることで、深い睡眠を維持しやすくなります。
年齢による生理的な変化(更年期など)
加齢に伴い、睡眠のパターンは自然と変化していきます。
- 睡眠の質の変化: 高齢になると、深いノンレム睡眠の時間が減り、浅い睡眠の時間が増える傾向があります。これにより、物音や体の不快感など、ちょっとした刺激でも目が覚めやすくなります。
- 体内時計の変化: 体内時計が前倒しになり、早く眠くなり早く目が覚める「前進型」になる人もいます。また、体内時計のリズムを調整するホルモン(メラトニンなど)の分泌量も減少します。
- 更年期: 女性の場合、更年期にはホルモンバランスの変化により、ほてりや発汗(ホットフラッシュ)、イライラ、不安感などの症状が現れることがあります。これらの不快な症状が夜間に起こることで、中途覚醒の原因となることがあります。
これらの生理的な変化は避けられない部分もありますが、適切な知識と対策で、睡眠の質を維持・改善することは可能です。
年代別の特徴(20代、更年期など)
中途覚醒の原因は、年代によってその傾向が異なります。「二時間おきに目が覚める」という症状であっても、背景にある要因は年代によって多様です。
20代など比較的若い世代の原因
20代や30代といった比較的若い世代では、以下のような原因が中途覚醒の中心となることが多いです。
- 精神的な要因: 就職、転職、人間関係、学業、恋愛など、ライフステージの変化や日々の出来事によるストレスや不安が原因となるケースが多く見られます。特に、責任が増える時期や環境の変化が大きい時期は注意が必要です。
- 生活習慣の問題:
- 不規則な生活: 残業、夜勤、休日の寝だめなど、仕事やライフスタイルによる睡眠リズムの乱れ。
- 夜間の覚醒習慣: スマートフォンやゲーム、SNSなどに夢中になり、就寝時間が遅くなり、体内時計が狂う。
- 飲酒・カフェインの過剰摂取: 付き合いや気分転換での飲酒や、仕事の効率を上げるためのカフェイン摂取が多い傾向があります。
- 寝室環境: 一人暮らしを始めたばかりで環境の変化に適応できていない、騒音の多い場所に住んでいるなども原因となり得ます。
- 病気: 比較的若い世代でも、睡眠時無呼吸症候群は発症します(特に肥満傾向がある場合)。また、うつ病や適応障害などの精神疾患が原因となることもあります。むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害は、若年で発症する場合もありますが、加齢とともに増加する傾向があります。
若い世代の中途覚醒は、ストレスや生活習慣の乱れが密接に関わっている場合が多いですが、病気の可能性もゼロではありません。特に日中の眠気やいびき、脚の不快感といった他の症状も伴う場合は注意が必要です。
更年期以降の世代の原因
更年期以降の世代、特に50代以降では、加齢に伴う生理的な変化に加えて、病気が中途覚醒の原因となることが増えます。
- 年齢による生理的な変化: 前述のように、深い睡眠の減少や体内時計の変化により、睡眠が浅くなり目が覚めやすくなります。
- 更年期症状: 女性の場合、更年期に伴うホットフラッシュや発汗、精神的な不安定さなどが夜間の覚醒を誘発します。
- 病気:
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS): 加齢とともに気道が狭くなりやすくなるため、SASの発症リスクが高まります。特に男性に多いですが、閉経後の女性もリスクが上昇します。
- 夜間頻尿・過活動膀胱: 膀胱機能の低下や前立腺肥大症(男性)などにより、夜間頻尿は高齢者によく見られる症状であり、中途覚醒の主要な原因の一つです。
- むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害: これらの疾患も、加齢とともに有病率が増加する傾向があります。
- その他の疾患: 心疾患、呼吸器疾患、神経疾患、関節痛など、睡眠を妨げる他の体の病気も増えてきます。
- 精神的な要因: 仕事からの引退、家族構成の変化、健康不安なども、精神的なストレスとなり睡眠に影響を与えることがあります。
更年期以降の世代で中途覚醒が続く場合は、加齢による自然な変化と決めつけず、病気の可能性も視野に入れて、一度医療機関に相談することが重要です。特に、いびきや日中の眠気、脚の不快な症状、頻尿といった中途覚醒以外の症状がある場合は、積極的に受診を検討しましょう。
二時間おきに目が覚める症状の対策
「二時間おきに目が覚める」という中途覚醒の症状を改善するためには、原因に応じた対策が必要です。病気が原因の場合は専門的な治療が必要ですが、病気以外の原因や、病気の治療と並行して、ご自宅でできるセルフケアも非常に有効です。
自宅でできるセルフケアと対策
まずは、日々の生活習慣や寝室環境を見直すことから始めましょう。これは「睡眠衛生」と呼ばれる、質の良い睡眠をとるための基本的な習慣です。
睡眠衛生の具体的な対策リスト
カテゴリ | 具体的な対策 | なぜ効果がある? |
---|---|---|
規則正しい生活 | 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる(休日も平日との差を1~2時間以内にする)。朝日を浴びる。 | 体内時計が整い、自然な睡眠リズムが確立される。メラトニンの分泌が調整される。 |
寝る前の習慣 | 就寝前3~4時間前からはカフェインを避ける。就寝前2~3時間前からはアルコールを避ける。 寝る前に熱い風呂を避ける(ぬるめのお湯にゆっくり浸かる)。 寝る直前のスマホ・PC使用を避ける。 | 覚醒作用のある物質を体内から排除。体温が一度上がってから下がる過程で眠気を誘う。ブルーライトの覚醒作用を避ける。 |
日中の過ごし方 | 日中に適度な運動をする(就寝直前は避ける)。 昼寝をするなら、午後3時までとし、30分以内にする。 | 体の疲労感が睡眠を深くする。長い昼寝や夕方の昼寝は夜の睡眠を妨げる。 |
寝室環境 | 寝室の温度・湿度を快適に保つ(室温20~22℃、湿度50~60%目安)。 寝室をできるだけ暗くする。 騒音対策をする(耳栓、防音カーテンなど)。自分に合った寝具を使う。 | 体が快適な状態を保ち、スムーズな入眠と睡眠維持を助ける。光や音の刺激による覚醒を防ぐ。体の不快感を軽減する。 |
リラックス | 寝る前にリラックスできる習慣を取り入れる(読書、音楽を聴く、軽いストレッチ、深呼吸、瞑想など)。 | 心身の緊張を和らげ、副交感神経を優位にする。 |
その他 | 寝床は眠るためだけの場所にする(寝床で食事、読書、スマホなどを長時間行わない)。 眠れないときは無理に寝床にいない(一度寝床から出てリラックスし、眠気を感じてから戻る)。 | 寝床と眠りを関連付け、条件反射的に眠りに入りやすくする。眠れない焦りからくる緊張を和らげる。 |
これらのセルフケアは、すべての人に有効であり、病気の治療と並行しても行うべき基本的な対策です。すぐに効果が出なくても、継続することが大切です。
専門的な治療法
セルフケアで改善が見られない場合や、病気が疑われる場合は、専門的な治療が必要です。治療法は、中途覚醒の原因となっている病気や状態によって異なります。
- 原因疾患の治療:
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS): CPAP療法が最も一般的です。夜間に専用のマスクを装着し、機械から空気を送り込むことで気道の閉塞を防ぎます。軽症の場合はマウスピース療法が有効なこともあります。
- むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害: ドパミン受容体作動薬や鉄剤、必要に応じて他の薬剤が処方されます。
- 夜間頻尿・過活動膀胱: 原因に応じて、過活動膀胱治療薬、抗利尿ホルモン薬、α遮断薬(前立腺肥大症の場合)、行動療法(水分摂取量の調整、膀胱訓練)などが行われます。
- その他の身体疾患: 痛みやかゆみ、呼吸困難など、睡眠を妨げる症状がある場合は、その原因となっている病気自体を治療します。
- 不眠症に対する治療:
- 薬物療法: 睡眠薬が処方されることがあります。ただし、睡眠薬は一時的な使用にとどめるのが望ましいとされており、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。最近では、脳の覚醒システムに作用する新しいタイプの睡眠薬も開発されています。
- 認知行動療法(CBT-I): 不眠に関する誤った考え方や行動パターンを修正し、良い睡眠習慣を身につけるための精神療法です。不眠症に対して効果が高いとされており、薬物療法に頼りたくない場合にも有効ですし、例えば厚生労働省のサイトなどでも不眠症に対する認知行動療法について触れられています。
- 精神疾患に対する治療: ストレス、不安、うつ病などが原因の場合は、精神科や心療内科での治療(薬物療法、精神療法など)が必要です。原因となっている精神的な問題を解決することが、睡眠の改善につながります。
専門的な治療を受けることで、中途覚醒の根本原因に対処し、症状を大きく改善できる可能性があります。自己判断せず、必ず専門医の診断のもとで適切な治療を受けてください。
二時間おきに目が覚める場合、病院を受診する目安
「二時間おきに目が覚める」という症状が続いている場合、病院を受診すべきか迷うこともあるでしょう。一時的なものであれば様子を見ても良いかもしれませんが、以下のような症状や状況が見られる場合は、病気の可能性も考えられるため、一度専門家に相談することをお勧めします。
受診すべき症状や状況
以下のチェックリストで、当てはまる項目が多いほど、医療機関への相談を検討すべきです。
- 中途覚醒が週に数回以上あり、1ヶ月以上続いている
- 夜中に目が覚めた後、再び眠りにつくまでに時間がかかる
- 中途覚醒のため、十分な睡眠時間が確保できていないと感じる
- 中途覚醒により、日中の眠気、倦怠感、集中力低下、イライラなどの不調を感じている
- 家族やパートナーから、睡眠中の大きないびきや呼吸停止を指摘されたことがある
- 起床時に頭痛や口の渇きがある
- 寝る前に脚のむずむず感や不快感があり、動かしたくなる
- 夜間に何度もトイレに起きる必要がある
- これらの症状により、仕事や学業、家事などの日常生活に支障が出ている
- 既存の病気がある、または服用中の薬がある
- 中途覚醒に対して、セルフケアを試したが改善が見られない
- 自分の睡眠について強い不安を感じている
特に、日中の強い眠気や集中力の低下は、睡眠不足だけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの病気が原因となっている可能性が高く、放置すると健康に重大な影響を及ぼす可能性があるため、早めに受診することが推奨されます。
何科を受診すれば良いか
中途覚醒の原因は様々なので、何科を受診すれば良いか迷うかもしれません。まずは、かかりつけ医や身近な内科医に相談するのも良いでしょう。医師が問診や簡単な検査を行い、専門的な診療が必要と判断すれば、適切な科を紹介してくれます。
原因が特定できている場合や、特定の症状が強く出ている場合は、以下の専門科を受診できます。
- 睡眠外来: 睡眠障害全般を専門とする診療科です。不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群など、様々な睡眠の問題に対応しています。原因が分からない場合や、本格的な検査(睡眠ポリグラフ検査など)を希望する場合は、睡眠外来がある病院を探すのが最も確実です。
- 精神科・心療内科: ストレス、不安、うつ病などの精神的な要因が中途覚醒の原因と考えられる場合に適しています。睡眠薬の処方や、認知行動療法などが行われることもあります。
- 耳鼻咽喉科: いびきや睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合に専門的な診療が可能です。気道の状態を詳しく調べたり、CPAP療法の導入や調整を行ったりします。
- 泌尿器科: 夜間頻尿や過活動膀胱など、排尿に関する問題が中途覚醒の原因と考えられる場合に専門的な診断と治療が受けられます。
- 神経内科: むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害など、神経系の問題が疑われる場合に適しています。
もし迷う場合は、まずはかかりつけ医や内科で相談し、紹介状を書いてもらうのがスムーズなことが多いです。
まとめ:頻繁な中途覚醒は病気のサインかもしれません
「二時間おきに目が覚める」という頻繁な中途覚醒は、単なる寝覚めの悪さではなく、背景に病気や生活習慣の大きな乱れが隠れているサインかもしれません。特に、日中の強い眠気や疲労感を伴う場合、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、夜間頻尿などの病気が原因となっている可能性があります。
中途覚醒の対策としては、まず規則正しい生活、飲酒・カフェインの制限、快適な寝室環境の整備といった睡眠衛生の改善が基本となります。しかし、これらのセルフケアで改善が見られない場合や、いびき、日中の眠気、脚の不快感、頻尿といった他の症状も伴う場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
病院を受診する際は、睡眠外来、精神科・心療内科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、神経内科などが考えられますが、まずはかかりつけ医や内科医に相談し、専門医を紹介してもらうのがスムーズです。
頻繁な中途覚醒を放置せず、原因を正しく理解し、適切な対策や治療を行うことで、質の高い睡眠を取り戻し、健康で快適な毎日を送ることができるでしょう。
免責事項:
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療法を保証するものではありません。個々の症状については、必ず医療機関を受診し、医師の診断と指導を受けてください。この記事の情報に基づいて行われた行為によって生じた損害等について、当方は一切責任を負いかねます。
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